【方法検討】哲学を俯瞰してみたいと思う君へ

読書生活の友

大学生になってはじめての4月、無数の講義がぎっしりとつまった時間割表に胸躍らせた記憶は、きっと誰しも心当たりがあるんじゃないだろうか(ただし、2ヶ月後もわくわくしているかは知るところではない)。その中から一つ一つを選びとって、じぶんだけの時間割を作るのは楽しいものだ。教養学部の「心理学概論」をとってみようか。そう思って実践に移した君は、大学の心理学が某メンタリストの言うような「好きな異性をふりむかせる方法」とか、「脈アリを見分けるための行動」とかとは無縁のものだと知って、がっかりするかもしれない。残念だったね。あるいは、シラバスの隅っこにあるような、誰も知らない講義を履修して、案外君の人生を変えてしまうような経験をするかもしれない。「昆虫食入門」を履修した友人はいま、狂ったようにバッタを揚げている。そして最も魅力的に映るであろう学問が、「哲学」だったのではないだろうか。誰しも難解かつ抽象的な知を渉猟し、自己満足に浸りたいものである。なので、勇気を出して履修してみるとしよう。するとたいていの場合、気難しそうなお爺さんが教壇に立っていて、小難しい質問を投げかけてわれわれを困らせる。どこの大学でも、そのようなものだろう。ある人は投げ出し、投げ出さずに耐久したものもしっかりと単位を落とし、数少ない単位の獲得者はあまりの疲労にこときれるのが世の常である。

原著にあたる

前置きはこの程度にとどめて本記事では、独学で哲学全体を俯瞰してみたい人、哲学について知った気になりたい人に向けて、その方法について検討したい。きっと君にとって興味のある領域もあれば、どうでもよい領域もあるだろう。私は現象学が好きだが功利主義は嫌いである。そこで、君の興味のあるところから原典にあたっていくという方法がある。私がお世話になった(なっている)哲学科の教授(例にもれずアブノーマルな先生である)はこうおっしゃった。「概説書の類は読むな、原典にあたれ」、と。ここでいう原典とは、日本語に翻訳されたものも含む。『100分で名著 カント 純粋理性批判』や『哲学用語図鑑』は避けて、『純粋理性批判』(岩波文庫)や『自由からの逃走』(東京創元社)を読みなさいということであろうが、正直に打ち明けて、私はこの掟を破りに破っている。『善の研究』など逆立ちしても読めたものではない。なので、『100分で名著 西田幾多郎 善の研究』でカンニングしてから、原典にあたるようにしている(それでも分からぬときもある)。100分で名著シリーズと『哲学用語図鑑』は哲学修練の足掛かりとして、たいへんおすすめである。先生には申し訳ないと思っている。

高校倫理

とはいえ原典を読むだけでは、理論と理論がどのような点で合意し、また相反するのかの、相互関係が見えるようになるまで相当の修練を必要とする。したがって、哲学全体を見渡してみたいという、叶わぬ願いを抱くようになる。完璧な答えとはいかないが、もっともおすすめしたいのが高校倫理である。高校倫理とは、一昔前ならセンター試験で、さしあたりは共通テストにおいて、高校生諸君が必死に取り組んでいる、あの高校倫理である。実は倫理には哲学分野を多分に含んでいる。しかもソクラテスからフロムまで、満遍なく触れる内容なので、意外に思われるかもしれないが、哲学を俯瞰するのに適していたりする。テクストは『現代の倫理』(山川出版社)が王道であるが、単調な筆致が眠気を誘うという方は、『大学入学テスト 倫理の点数が面白いほどとれる本』(KADOKAWA)が要点を押さえていておすすめである。受験生向けは胃もたれがするという方には『もう一度読む倫理』(山川出版社)もライトな内容でおすすめである。私はセンター試験対策用の黄色本を愛用している。

私が実際に愛用していた教科書

いずれの方法にしてもある程度の時間はかかってしまうものであるから、時間に余裕のある学生ならなおさら、多忙のことと存じ上げる労働者各位も、気長に哲学をはじめてみるのはいかがだろうか。いや、はじめるための下準備とでも、言うべきだろうか。

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