【概説】「文化/空間論的転回」とは何か

社会学用語概説

この記事でわかること

  • 人文地理学をはじめとする社会科学で使われる「文化/空間論的転回」とは何か
  • 「文化/空間論的転回」の前と後では何が変わったのか

「文化論的転回Cultural turn」、あるいは「空間論的転回Spatial turn」とは、1980年代後半以降の社会科学にあらわれる知的潮流です。用語の使われ方は分野によって多少の相違がありますが、一般に文化や空間が社会的に生産されたものと捉えなおすことを「文化/空間論的転回」と呼びます。

それ以前の文化/空間観は、文化や空間を限定的で固定的なものとして捉えていました。例えば、「日本人に特有の勤勉さ、忍耐強さ、謙虚さは日本に特有の文化である」というとき、文化を絶対的な実在として、何者にも否定し難い固定的なものとして扱っています。しかし、文化論的転回にならってこれを言い直すとすると、「日本人に特有だと言われている勤勉さ、忍耐強さ、謙虚さは、誰かが言語的に作り出した幻のようなもので、日本に特有の文化ではありえない」となります。このような理解に基づけば、文化とは時々刻々と破壊と再構成を繰り返す、流動的なものであると言えるでしょう。

空間の場合であっても同様に、例えば「四国は弘法大師が修行を積んだ聖地であり、それは過去も未来もずっとそうである」というとき、空間を絶対的な実在として、何者にも動かし難い固定的なものとして扱っています。しかし、空間論的転回にならってこれを言い直すとすると、「場所と概念・価値が恣意的に結びついてできたのが聖地であり、社会的に構成され続ける限りでしか、聖地とは呼ばれ得ない」となります。

文化/空間論的転回以前の論者を一人触れておきましょう。1917年に文化人類学者のクローバーは「文化超有機体説」を提唱しました。文化超有機体説とは、文化が有機物や無機物を超え出た存在であるとみなす説です。つまり、「人間という有機体を超えた自律的で閉鎖的な実在として文化は位置づけられ、それは人間の考えや行動を規制する鋳型のようなものとして理解され」ました(神田2013)。しかしこのような説は、それ自体がクローバーの言葉によってしか説明できない(つまり独りよがりな)概念であると批判されました。

参考文献

神田孝治,文化/空間論的転回と観光学,観光学評論,Vol.1-2,2013,pp.145-157.

森正人,文化地理学講義;〈地理〉の誕生からポスト人間中心主義へ,新曜社,2021.

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